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弊社は、昨今の車両電子化に伴う、様々な電子ディバイスが搭載されている車両に対し、特にエーミングと言われるキャリブレーション作業やEV対応などに対応出来る設備と技術を有し、業界の垣根を越えた研修やセミナーを実施。また2024整備事業者アワード大賞受賞。オートバックスグループ研修施設、テュフゴールド工場、ARC東京研修センターなど様々な活動をしております。

【ADAS作業レポート】|トヨタ アクア MXPK11側面修理からPVMへ。最後は「4カメラの映像」まで合わせて修理完了。今回の車両は、トヨタ アクア MXPK11/令和8年5月登録実施作業は側面修理。修理後の電子制御装置整備として、周辺監...
19/09/2026

【ADAS作業レポート】|トヨタ アクア MXPK11

側面修理からPVMへ。最後は「4カメラの映像」まで合わせて修理完了。

今回の車両は、

トヨタ アクア MXPK11/令和8年5月登録

実施作業は側面修理。

修理後の電子制御装置整備として、

周辺監視モニター/パノラミックビューモニター(PVM)

のキャリブレーションを実施しました。

この車両はリヤカメラディテクション機能付き。

そして今回は、最終確認でPVMの合成画像にズレが確認されたため、対象箇所だけで終わらせず、最終的に4カメラすべてを調整しています。

使用した診断機は、

トヨタ純正 GTS+

使用機材は、

トヨタ純正アドバンストパーク用ターゲットセット
(SBDオリジナル加工あり)
3Dレーザー
フラスコエレベーター
土間調整用プレート

です。

⸻

📷 今回のPOINTは「キャリブレーションしたから終わり」ではありません

PVMは、フロント・リヤ・左右のカメラ映像を利用し、車両を上から見たような俯瞰映像を作り出しています。

そのため重要なのは、

診断機上で作業を正常終了させることだけではありません。

最終的に実際のPVM画面を表示して、

4つのカメラ映像がどうつながっているのか?

まで確認する必要があります。

今回もそこを確認すると、最終画像にズレが残っていることを確認。

そこで4カメラを調整することにしました。

⸻

🎯 ターゲットを「置く」のではなく、車両に対して基準を作る

今回使用しているのは、トヨタ純正アドバンストパーク用ターゲットセット。

一部には、実際の作業性を考えてSBDオリジナル加工を施しています。

写真を見ると、車両周囲にターゲットを並べているだけのように見えるかもしれません。

しかし、PVMキャリブレーションでは、

車両中心
前後方向
左右方向
ターゲットまでの距離
ターゲットの位置関係

といった幾何学的な基準作りが重要です。

そこで3Dレーザーを使って基準を作り、ターゲットを配置していきます。

⸻

📐 そして今回、もう一つ重要なのが「床」

ADASキャリブレーションでは、ターゲットばかりに目が行きがちですが、

そのターゲットと車両が載っている床面も作業条件の一部です。

今回は必要に応じて、

フラスコエレベーター+土間調整用プレート

を使用。

写真でも、タイヤ接地部にプレートを使用している様子が確認できます。

車両とターゲットとの位置関係を作る作業だからこそ、

ターゲットだけ正しく置けばよい、ではありません。

車両側の姿勢も含めて作業環境を作り込んでいきます。

⸻

💻 診断機はトヨタ純正GTS+

今回もトヨタ純正診断環境GTS+を使用。

PVMのキャリブレーションを進め、最終的には実際のモニター画面を使って4カメラの状態を確認します。

写真にあるCamera Checkでは、

Front/Rear/Left/Right

それぞれのカメラ映像を確認できます。

さらにターゲットを実際に認識させながら、各カメラの位置関係を確認していきます。

ここまで来ると、

診断機の画面だけを見て作業するエーミングではありません。

実際の車両、ターゲット、床面、カメラ映像。

すべてを見ながら作業を進めます。

⸻

👀 PVMだからこそ「目で見て分かる」

今回の写真で面白いのは、調整前後のPVM画像です。

PVMはお客様自身が日常的に見るシステムです。

ミリ波レーダの光軸値とは違い、

映像のズレは、お客様自身が直接目で確認できます。

床のラインや周囲の物体を見ると、

「映像がつながっているか」

「位置関係に違和感がないか」

が分かりやすい。

だからこそ私たちは、

GTS+で正常終了した=作業完了

とは考えていません。

⸻

🔍 最終画像にズレがあれば、そこからもう一度考える

今回もキャリブレーション後の最終画像を確認したところ、ズレが残っていました。

そこで、

「診断機では終わったからOK」

ではなく、

なぜズレているのか?
どのカメラが影響しているのか?
4カメラの合成状態は適正なのか?

を確認。

結果として今回は、

Front
Rear
Left
Right

4カメラを調整しました。

そして最終的なPVM映像まで確認して作業完了です。

⸻

⚠️ DTC消去でも、一つ気になる画面が

今回のGTS+のヘルスチェックでは、全RoB消去実行後、

HV:ECUからエラー応答

さらに、

メインボデー・照合:RoB消去機能を持たないため消去未実施

という表示も確認しています。

ここも大切です。

「全消去」を押したから、

すべてのECUが正常に消去された

とは限りません。

診断機が返してきた結果を最後まで確認する。

これも現在の故障診断では重要です。

⸻

🔧 側面修理でも、最後は車両全体を見る

今回の入口は側面修理です。

しかし、現在の車両では修理したパネルだけを見て作業を終えることはできません。

修理によって影響するセンサーやカメラを確認し、

必要なキャリブレーションを実施。

さらに、

実際にシステムが作り出している最終画像まで確認する。

今回のアクアでは、その確認から4カメラ調整まで行いました。

⸻

📌 「正常終了」と「正常な状態」は、必ずしも同じ意味ではない

これは私たちがADAS作業で特に大切にしている部分です。

診断機に、

「正常終了」

と表示された。

でも、本当にそれだけで終わっていいのか?

PVMなら、実際の画像を見る。

ミリ波レーダなら、光軸ずれ量を見る。

前方カメラなら、必要な確認作業を行う。

そしてDTCも、単に消去ボタンを押すのではなく、各ECUから返ってきた結果まで確認する。

作業を実行したことと、車両が正しい状態になったことは別です。

今回のアクアも、

側面修理
→ PVMキャリブレーション
→ 最終画像確認
→ ズレを確認
→ 4カメラ調整
→ 最終画像を再確認

ここまで行って作業完了。

部品を直すだけではなく、

電子制御システムまで含めて元の状態へ戻す。

これが現在のADAS修理だと考えています。

#トヨタ #アクア #エーミング #キャリブレーション #パノラミックビューモニター #アドバンストパーク #純正診断機 #電子制御装置整備 #特定整備 #故障診断

【設備更新】SBD本社工場 リフト入れ替え工事が完了しました!オートバックス次世代自動車研究所(SBD本社工場)では、かねてより進めていたリフトの入れ替え工事が完了しました!今回の工事は、単純に古いリフトを新しいリフトへ交換したものではあり...
18/09/2026

【設備更新】SBD本社工場 リフト入れ替え工事が完了しました!

オートバックス次世代自動車研究所(SBD本社工場)では、かねてより進めていたリフトの入れ替え工事が完了しました!

今回の工事は、単純に古いリフトを新しいリフトへ交換したものではありません。

これからの自動車整備に必要となる、

一般整備・EV整備・4輪アライメント・ADASエーミング、そして人材育成。

これらを一つの工場で効率よく行うため、工場全体のストール構成と役割を見直しました。

■ 今回工事したのは「5ストール」のエリア

SBD本社工場には、車検ラインとは別に、これまで7つの整備ストールがありました。

そのうち今回、設備更新を行ったのが5ストールです。

工事前は、

・ドライブオンリフト 1基(ジャッキングビーム付)
・アライメント対応ドライブオンリフト 1基
・パンタ式リフト 2基
・2柱リフト 1基

という5ストール構成でした。

今回、このエリアを全面的に見直し、

・ドライブオンリフト 1基
 ジャッキングビーム+テーブルリフト仕様

・アライメント対応ドライブオンリフト 1基

・ファンタスアームフラット 2基

・研修スペース 1ストール

という、4つの整備ストール+1つの研修スペースへ再構成しました。

単純に「5ストールを4ストールへ減らした」という考え方ではありません。

整備をする場所に加えて、人を育てる場所をつくる。

これも今回の設備更新における大きな目的の一つです。

■ 工場全体では「7ストール」から「6整備ストール+研修1ストール」へ

今回の工事対象外である既存設備には、

EV対応ワイド2柱リフト 1基
ノーマルドライブオンリフト 1基

があります。

これらを今回更新した設備と合わせると、SBD本社工場の整備側は、

① EV対応ワイド2柱リフト 1基
② ノーマルドライブオンリフト 1基
③ ジャッキングビーム+テーブルリフト付ドライブオン 1基
④ 4輪アライメント対応ドライブオン 1基
⑤ ファンタスアームフラット 1基
⑥ ファンタスアームフラット 1基

以上の6整備ストール。

そして新たに、

研修スペース 1ストール

を確保しました。

つまり、車検ラインを除いた工場全体では、

従来:7整備ストール
 ↓
現在:6整備ストール+研修スペース1ストール

という再編です。

さらに、これとは別に全自動ツインコンビネーション検査ラインも備えています。

■ 今回、リフトそのものと同じくらいこだわったのが「床」です

今回の工事で、私たちが特にこだわった部分があります。

それが、

ドライブオンリフト最下限時の「水平精度」です。

一般的には、リフトは車両を安全に昇降できるよう適切に設置されれば、その役割を果たします。

しかしSBDでは、それだけでは終わらせませんでした。

すべてのドライブオンリフトについて、最下限時のフラットレベルを実際に計測。

さらに今回の設置工事では、通常のリフト設置で求められる範囲から一歩踏み込み、ADASエーミング用の水平な作業面として活用できることを前提に、設置精度を通常以上のレベルまで追い込んでいます。

なぜ、そこまでするのか。

■ 「リフト」だけど、車を上げるだけには使わない

現在の自動車整備では、設備単体の性能だけではなく、その設備が置かれている作業環境そのものが重要になってきています。

特にADASエーミングでは、

車両の姿勢。
ターゲットとの距離。
車両中心。
角度。
そして水平。

こうした作業条件が重要になります。

そこで今回、ドライブオンリフトを、

車両を上げて整備するための設備

としてだけではなく、

最下限まで下げれば、

ADASエーミングを行うための水平な作業スペース

としても活用できるようにしました。

大きな面積を占有する設備だからこそ、一つの用途だけに限定しない。

1つのストールに複数の機能を持たせる。

これも、私たちが考える次世代整備工場の設備づくりです。

■ ストール数ではなく「何ができる工場なのか」

今回、整備ストールは7から6になりました。

しかし、私たちが今回の設備更新で重視したのは、単純なストール数ではありません。

一般整備ができる。

EVに対応できる。

足回り整備ができる。

4輪アライメントができる。

ADASエーミングができる。

車検・検査ができる。

そして、

次世代自動車整備を学ぶための研修ができる。

「何台入庫できる工場なのか」だけではなく、

「一台の自動車に対して、どこまで対応できる工場なのか」。

私たちは、こちらの方がこれからますます重要になってくると考えています。

■ 自動車が変われば、工場も変わる

現在の自動車は、機械だけでなく、電子制御、通信、センサー、ソフトウェアなどによって成り立っています。

当然、それを整備する工場にも変化が求められます。

診断機を導入する。

エーミング機器を導入する。

アライメントテスターを導入する。

EVに対応する。

それだけではなく、

それらを正しく使うことのできる「作業環境」をつくり、さらに、それを扱える「人」を育てる。

今回、5ストールの設備を入れ替えながら、あえて1ストールを研修スペースへ変更した理由もここにあります。

設備だけを最新にしても、次世代自動車整備は完成しません。

設備・環境・技術・人材。

そのすべてをアップデートしていく。

今回のリフト入れ替え工事も、そのための一つの取り組みです。

新しくなったSBD本社工場で、これからまた様々な車両を使った検証・整備・研修を行っていきます!

#オートバックス次世代自動車研究所 #自動車整備 #次世代自動車 #整備工場 #リフト #ファンタスアームフラット #イヤサカ #エーミング #4輪アライメント #故障診断 #研修 #人材育成

18/09/2026

【その事故車、本当に「修理完了」と言えますか?】

― 目に見えない安全まで復元する時代へ ―

板金塗装業界の専門誌「ボデーショップレポート(BSR)」2026年10月号。

今月号では、

「アジャスター・消費者への説明力の向上」
― 透明性時代の鈑金塗装工場が備えるべき『説明力』の全体像 ―

という特集が組まれています。

そして、毎号掲載されている「合理的な見積り実践」。

今回は、スズキ・ワゴンRスマイルの事故修理が取り上げられていました。

修理前・修理中の写真と実際の見積書をもとに、修理工法、工数、部品、塗装などについて専門的な検証が行われています。

非常に興味深い記事です。

しかし今回、私たちにはどうしても気になることがありました。

それは、「修理後の安全性を、何によって担保したのか」という部分です。

■ 現在の事故車修理は「見た目を元に戻す」だけでは完結しません

掲載されている車両は、

スズキ・ワゴンRスマイル
型式:MX81S
初度登録:令和5年2月
デュアルカメラブレーキサポート装着車

です。

現在の自動車には、カメラ、ミリ波レーダー、超音波センサー、各種ECUなど、多くの電子制御装置が搭載されています。

それらが連携することで、

「見る」
「判断する」
「警告する」
「ブレーキを制御する」

といった機能が成立しています。

つまり現在の事故車修理では、

ボディが元に戻った。
寸法が元に戻った。
塗装がきれいになった。

それだけでは、必ずしも「事故前の車両状態に戻った」とは言えません。

なぜなら、目には見えない電子制御システムが正常であることも確認しなければ、車両本来の性能が復元されたことを確認できないからです。

■ メーカーは「軽衝突」でも確認を求めています

今回の車両に搭載されているデュアルカメラブレーキサポート。

スズキの整備要領書には、ステレオカメラの取扱いについて重要な記載があります。

ステレオカメラやウインドシールドガラスを脱着・交換した場合だけではありません。

軽衝突でもステレオカメラの軸ずれが発生する可能性があるため、エーミング調整を行う。

メーカーは、事故による入力がADASに影響する可能性を想定しています。

つまり、

「カメラを触っていないから大丈夫」

「ガラスを交換していないから大丈夫」

「警告灯が点いていないから大丈夫」

という判断だけでは十分ではありません。

メーカーが定めた整備情報を確認し、必要な診断、校正、再設定、リセットなどを実施し、その結果を確認する。

そこまで行って初めて、電子制御を含めた車両性能の復元を確認することができます。

■ 今回の問題は「エーミング代が抜けている」ことではありません

今回掲載されている見積書を見る限り、ステレオカメラのエーミングや、それに相当するADASの確認・調整作業を確認することができませんでした。

もちろん、誌面に掲載された情報だけで、実際の作業すべてを判断することはできません。

そして、私たちは今回の見積もりを作成した工場や、講評された方々を批判したいわけでもありません。

むしろ、私たちが考えたいのは、

「なぜ、これが抜けてしまうのか?」

ということです。

これだけ詳細に損傷を確認し、

修理方法を検討し、

工数を検証し、

部品を確認し、

塗装範囲を確認し、

専門家が見積内容を検証している。

それでも、車両の安全に直接関係するADASの確認という視点が、議論の表面に出てこない。

私たちは、ここに現在の事故車修理業界が抱える大きな課題があると考えています。

■ 「修理」の定義そのものを変える時期ではないでしょうか

これまでの事故車修理では、

損傷したパネルを交換する。
骨格寸法を復元する。
塗装する。
組み付ける。

こうした「物理的な復元」が修理の中心でした。

もちろん、それらは今でも非常に重要です。

しかし、車そのものが変わりました。

現在の車両は、機械とボディだけで成立しているわけではありません。

センサー、ECU、通信、ソフトウェア、そしてそれらの校正値まで含めて、一台の自動車として成立しています。

ならば事故車修理も、

「外観・寸法・機械的な復元」

だけではなく、

「電子制御システムを含めた車両性能の復元」

までを修理として考える必要があります。

そのために必要になるのが、

診断。

エーミング。

校正。

初期化。

再設定。

リセット。

そして、作業後の正常性確認です。

これは「追加作業」ではありません。

次世代自動車を事故前の状態へ戻すために必要な、修理工程の一部です。

■ 「安全を担保する」とは何でしょうか

私たちは、ここが最も重要だと考えています。

事故車修理における安全性は、

「ちゃんと直しました」

という言葉だけでは担保できません。

メーカーの整備要領書を確認した。

必要な診断を行った。

必要な校正・調整・再設定を行った。

作業後にシステムが正常であることを確認した。

そして、その結果を記録として残した。

こうした一つひとつの工程とエビデンスによって、

「この車両は安全に使用できる状態へ復元されています」

と説明できる。

これこそが、これからの事故車修理に求められる「説明力」ではないでしょうか。

■ 見える損傷から、見えない損傷へ

事故車を見れば、へこんだドアは分かります。

傷ついたサイドシルも分かります。

塗装の損傷も分かります。

しかし、

カメラが事故前と同じ方向を正確に見ているのか。

センサーの認識範囲は正常なのか。

ECUに異常や事故の影響が残っていないのか。

これは、外観を見ただけでは分かりません。

そして、この「目に見えない部分」が、衝突被害軽減ブレーキなどの安全機能に関わっています。

だからこそ現在の事故車修理には、

「見えるものを直す技術」と
「見えないものを確認し、正常な状態へ戻す技術」

その両方が必要です。

■ 業界全体で「安全な修理」を再定義する時期

今回の記事は、ある意味で非常に象徴的だと感じました。

日本の板金塗装業界を代表する専門媒体で、

「合理的な見積もり」

「透明性」

「説明力」

が議論されています。

それ自体は、とても重要なことです。

だからこそ、もう一歩進めたい。

工数の説明だけではなく、
修理の必要性を説明する。

金額の透明性だけではなく、
安全性を確認したプロセスも透明にする。

そして、

「何を交換したか」だけではなく、
「車両本来の性能が戻ったことを、何によって確認したのか」を説明する。

ここまで含めて「合理的な見積もり」「説明力」を考える時代に入っているのではないでしょうか。

これは、一つの工場、一人のアジャスター、一人の技術者の問題ではありません。

事故車修理に関わる業界全体の知識と考え方を、現在の自動車に合わせてアップデートしていく必要がある。

今回の記事を読んで、改めてそう感じました。

⸻

事故車修理のゴールは、「きれいに直った」ではない。

事故前に持っていた車両性能を、安全に使える状態へ戻すこと。

外観も。

構造も。

機械も。

そして、目には見えない電子制御システムも。

診断し、修復し、校正し、再設定し、正常性を確認する。

そして、その事実を記録として残す。

そこまでできて初めて、現在の自動車における「修理完了」と言えるのではないでしょうか。

私たちは、そう考えています。

#事故車修理 #鈑金塗装 #エーミング #故障診断 #デュアルカメラブレーキサポート #スズキ #特定整備 #整備要領書 #合理的な見積もり #ボデーショップレポート #自動車整備 #次世代自動車 #オートバックス次世代自動車研究所

【続報】GLA35リコール、ディーラーに持ち込んだら「書き換え不要」でしたでは、一般整備工場のXENTRYでリコールは完了できるのか?以前Facebookでご紹介した、弊社所有のMercedes-AMG GLA35 4MATICのリコールに...
17/09/2026

【続報】GLA35リコール、ディーラーに持ち込んだら「書き換え不要」でした

では、一般整備工場のXENTRYでリコールは完了できるのか?

以前Facebookでご紹介した、弊社所有の

Mercedes-AMG GLA35 4MATIC

のリコールについて、続報です。

以前の投稿では、リコールの案内が来る前に、弊社が所有するMercedes-Benz純正診断環境XENTRYを使用して車両を確認し、利用可能だったソフトウェアアップデートを実施していたことをご紹介しました。

その後、GLA35のトランスミッションコントロールに関係するリコールが公表。

そこで疑問が一つ。

「リコール前に自社のXENTRYでアップデートしたプログラムと、今回のリコール対策プログラムは同じなのか?」

これを確認したくて、今回は正式にMercedes-Benzディーラーへ車両を入庫しました。

⸻

🚗 リコール作業は、予想以上に早く終了

車両を預けてしばらくすると、

「作業完了しました」

との連絡。

思っていたよりかなり早い。

そこで引き取り時に、ディーラーの方へ詳しく聞いてみました。

「今回、実際にトランスミッションコントロールのプログラムを書き換えたのですか?」

答えは、

今回は書き換える必要がなかった。

とのことでした。

ここからが今回、一番興味深かった部分です。

⸻

💻 リコール=必ずプログラムを書き換える、ではなかった

ディーラーから説明いただいた内容を整理すると、今回の作業ではまず、

現在、車両のトランスミッションコントロールにインストールされているソフトウェアバージョンを確認。

そして、

リコール対策で指定されているバージョンになっていなければアップデート。

一方、

すでに指定バージョンになっていれば、再度アップデートする必要はない。

その場合は、

指定されたバージョンが車両に入っていることを確認し、その画面・データのエビデンスを取得。

その情報をMercedes-Benz Japan側へ報告する。

今回ディーラーからは、そのように説明を受けました。

⸻

🔍 では、弊社のGLA35はどうだったのか?

結論から言うと、

すでにリコール対策として求められているソフトウェア状態になっていました。

つまり、以前弊社でXENTRYを使用して実施したオンラインアップデートの中に、今回のリコールで対象となったトランスミッションコントロール側の更新が含まれていた、という結果です。

そのため今回、

ディーラーで改めてプログラムを書き換える必要はありませんでした。

これは、私たちとしても非常に興味深い結果でした。

⸻

🔧 一般整備工場のXENTRYにも、同じプログラムが配信されていた

今回、実車で一つ確認できたことがあります。

弊社はMercedes-Benzディーラーではありません。

一般の整備事業者として、正規のXENTRY診断環境を導入しています。

しかし今回、

弊社XENTRYで事前に実施したオンラインアップデートによって、結果的にリコールで求められたソフトウェアバージョンがすでに車両へインストールされていた。

ここは大きなポイントだと思います。

つまり少なくとも今回のGLA35では、

ディーラーだから配信されるプログラムと、一般整備事業者の正規XENTRYだから配信されないプログラム、という単純な区分ではなかった

ことになります。

一般整備事業者側のXENTRYでも、車両に対して必要なソフトウェアアップデートが配信され、実際にインストールできていた。

これは今回の実車で確認できた事実です。

⸻

⚠️ ただし、ここで大きな違いも分かりました

では、

「XENTRYを持っていれば、一般整備工場でもリコール対応を完結できるのか?」

今回の結果からは、そう単純には言えません。

ここが今回、最も勉強になったところです。

弊社でXENTRYを使用したときには、

車両に利用可能なソフトウェアアップデートが存在する

ことは確認できます。

そして、そのアップデートを実施することもできます。

しかし、

「このプログラム更新が、後に公表されるこのリコールの対策プログラムである」

という情報までは、当時の弊社側XENTRYから確認できませんでした。

⸻

🧩 「診断機を持っている」と「メーカー情報を持っている」は同じではない

今回、ディーラーの方から説明を聞いて、ここが非常に印象に残りました。

一般整備事業者側にもXENTRYがある。

オンライン接続もできる。

ソフトウェアも配信される。

プログラミングもできる。

しかしディーラー側には、それに加えて、

メーカー/インポーターからリコールに関する情報が配信され、どの車両に、どの対策を行い、どの状態を確認し、その結果をどう報告するのか

という情報と業務フローがあります。

つまり、

「同じ診断機を持っている」=「持っている情報まで同じ」

ではない。

ここには明確な違いがあると感じました。

⸻

📋 「車が対策済みの状態」と「リコール実施済み」は別だった

そして今回、もう一つ重要なことが分かりました。

弊社GLA35は、ディーラーへ持ち込む前から、

車両のソフトウェア自体は、すでに今回要求された状態になっていました。

だから、車両機能の面だけを見れば、追加のプログラム書き換えは不要だった。

しかし、それだけではメーカー側の管理上、

「リコール実施済み」

にはなりません。

ディーラーが車両を確認し、

対象ソフトウェアバージョンであることを確認
↓
画面・データのエビデンスを取得
↓
Mercedes-Benz Japanへ報告
↓
リコール実施済みとして処理

という工程が必要だったとの説明でした。

ここは非常に重要です。

⸻

📮 リコール通知を止めるためにも、正式な確認が必要

つまり今回のように、

リコール発表前に正規XENTRYで結果的に対策プログラムが入っていた

としても、

「もうアップデートしてあるからディーラーへ行かなくていい」

という話ではありません。

メーカー側では、その車両について正式にリコール措置が完了したことを管理する必要があります。

国土交通省も、対象車についてはメーカーや販売会社への確認を案内しており、2026年4月以降はメーカーのリコール検索で車台番号を入力して改善実施の有無を確認する仕組みが使われています。

今回の弊社GLA35でも、

ディーラーで確認
→ エビデンス取得
→ Japan側へ報告

という正式な処理を行っていただきました。

⸻

💡 今回の検証で見えた「XENTRYの実力」と「ディーラーの役割」

今回の結果は、私たちにとって非常に良い勉強になりました。

一つは、

一般整備事業者が正規に導入したXENTRYでも、今回必要となったソフトウェア更新を事前に実施できていたこと。

これは純正診断環境を導入する意味を考えるうえで、とても興味深い結果です。

しかし同時に、

純正診断機を持っているだけでは、ディーラーと同じではない

ことも改めて分かりました。

ディーラーには、

診断機
+
メーカー/インポーターからのリコール情報
+
対象車両情報
+
対策内容
+
確認方法
+
エビデンス
+
メーカーへの実施報告

という仕組みがあります。

ここは、単純に診断機を購入しただけでは得られない部分です。

⸻

🔬 「できる・できない」ではなく、どこまで同じなのか

純正診断機と汎用診断機。

ディーラーと一般整備事業者。

これを単純に、

「できる/できない」

だけで比較するのは、もう難しくなってきていると感じます。

今回のGLA35では、

プログラムそのものは一般整備事業者のXENTRYでも事前に更新できていた。

しかし、

その更新が後のリコール対策に該当するという情報と、正式なリコール完了処理はディーラー側の業務だった。

この違いを実車で確認できたことが、今回一番の収穫でした。

⸻

🙏 今回、ディーラーの方には本当に丁寧に対応していただきました

こちらから細かい技術的な質問をさせていただいたにもかかわらず、

「すでにアップデートされている場合はどうするのか?」

「今回、実際に書き換えたのか?」

「リコール実施済みはどのように管理されるのか?」

といった質問にも非常に丁寧に説明していただきました。

そのおかげで、

診断機側から見える世界と、ディーラー/メーカー側で管理されている世界の違い

を理解することができました。

ありがとうございました。

⸻

📌 今回の結論

弊社XENTRYでリコール発表前にアップデート
↓
その後、GLA35にリコール発表
↓
ディーラーへ正式入庫
↓
対象ソフトウェアバージョンを確認
↓
すでに対策バージョンだった
↓
再プログラミング不要
↓
ディーラーがエビデンス取得
↓
Mercedes-Benz Japanへ報告
↓
正式にリコール実施済みへ

非常に興味深い結果になりました。

「純正診断機を持つ」ということ。

そして、

「メーカーのサービスネットワークに入っている」ということ。

似ているようで、同じではありません。

今回のGLA35は、その違いを実車で確認できる、とても良い検証車両になりました。

#純正診断機 #リコール #ソフトウェアアップデート #オンラインプログラミング #故障診断 #電子制御装置整備 #自動車整備 #サイバーセキュリティ #診断環境

【ADAS作業レポート】|MAZDA CX-5 KF2P「左後ろドアを交換しただけ」――でも、ADAS作業が発生します。今回の車両は、MAZDA CX-5 KF2P/令和4年7月登録今回請け負った修理は、左後ろドア交換。その修理工程に伴い、...
17/09/2026

【ADAS作業レポート】|MAZDA CX-5 KF2P

「左後ろドアを交換しただけ」――でも、ADAS作業が発生します。

今回の車両は、

MAZDA CX-5 KF2P/令和4年7月登録

今回請け負った修理は、

左後ろドア交換。

その修理工程に伴い、左ドアミラーの脱着が発生しました。

そして左ドアミラーには、360°ビュー・モニタ・システムを構成する左カメラが装着されています。

そのため今回、

360°ビュー・モニタ・システム エーミング(左側のみ)

を実施しました。

診断機はMAZDA純正 MDARS。

使用機材は、

MAZDA純正ドットマット
3Dレーザー
デジタル距離計

安定化電源はGYSを使用しています。

今回のPOINTは、エーミングそのものだけではありません。

「作業後に見つかったカメラ映像のズレは、今回の修理によって発生したものなのか?」

ここです。

⸻

🔧 左後ろドア交換から、なぜエーミングにつながる?

今回交換したのは左後ろドアです。

一見すると、

「後ろのドア交換とADASに何の関係があるの?」

と思うかもしれません。

しかし、実際の修理工程を追っていくと、

左後ろドア交換
↓
修理工程上、左ドアミラーを脱着
↓
左ドアミラーには360°ビュー用カメラが装着
↓
左カメラのエーミングが必要

とつながっていきます。

これが、私たちがいつも重要だと考えている、

「何を交換したか?」ではなく、
「その修理によって何に影響したか?」

という考え方です。

⸻

📷 そして作業前、360°ビューを確認すると……

ABNLでは、全方位カメラを伴う作業では、作業開始前にモニター映像の簡易目視確認を行っています。

今回も左後ろドア交換・左ドアミラー脱着を行う前の状態を確認しました。

すると、

今回触る左カメラ以外にも、すでに映像のズレが確認できました。

特に、フロントカメラ側のズレは入庫時点ですでに確認しています。

ここが今回、非常に重要なポイントになりました。

⸻

⚠️ 作業後だけを見たら、誰がズラしたのか分からない

左後ろドアを交換。

左ドアミラーを脱着。

左カメラをエーミング。

その後、360°ビュー・モニタを表示したとします。

そこでフロント側にもズレが確認されたら、

「今回の修理でズレたのでは?」

という話になる可能性があります。

しかし今回、フロントカメラ側のズレは、

左後ろドアを交換する前、左ドアミラーを脱着する前から存在していました。

つまり今回の修理との因果関係を切り分けることができます。

そのため、作業前にお客様へ状態をご説明。

フロントカメラ側については、

「今回はそのままでよい」

とのご意向を確認しました。

そこで今回は、請け負った修理との因果関係がある、

左カメラのみ

をエーミングしています。

⸻

👀 360°ビューは、お客様自身が「ズレ」を見られる

ここが、ミリ波レーダなどとは少し違うところです。

ミリ波レーダの光軸がどのような状態なのかを、お客様が運転席から直接目で見ることはできません。

しかし、360°ビュー・モニタは違います。

カメラ映像のつながりや位置関係を、お客様自身が画面で確認できます。

今回の写真でも、車両周囲の床面ラインがカメラ映像の境界をまたいで表示されているため、映像の位置関係が非常に分かりやすく確認できます。

だからこそ、

作業前からズレていたのか。
今回の作業によってズレたのか。

これを明確にしておくことが重要です。

⸻

📸 Beforeを残すことが、作業後の「証明」になる

ADAS作業では「After」の記録を残すことが一般的になってきました。

でも今回のようなケースを考えると、

Afterだけでは足りません。

必要なのは、

Before
↓
Repair
↓
Calibration
↓
After

です。

今回でいえば、

入庫時の360°ビューを確認
↓
フロント側に既存のズレを確認
↓
お客様へ説明
↓
左後ろドア交換
↓
左ドアミラー脱着
↓
左カメラ個別エーミング
↓
作業後確認

という流れになります。

Beforeがあるからこそ、今回の修理との因果関係を説明できます。

⸻

🎯 MAZDA純正ドットマットを使用

今回のエーミングでは、MAZDA純正ドットマットを使用。

MDARSから、

「360°ビューモニタシステムの静止エーミング(高画質)」

を選択。

さらに、

「個別エーミング」
→「左カメラ」

を選択します。

写真のMDARS画面にも、

「エーミングするカメラを下から選び、所定の位置にマーカー(2個)を設置してください。」

と表示されています。

今回は左カメラのエーミングですので、MAZDA純正ドットマット2枚を車両左側の所定位置へ設置。

3Dレーザーとデジタル距離計を使用して、車両を基準に位置関係を作っていきます。

⸻

📐 「マットを置く」ことがエーミングではない

写真を見ると、床に2枚のドットマットを置いているだけに見えるかもしれません。

しかし重要なのは、

どこに置くか。

車両との位置関係を正しく作らなければ、正しい基準にはなりません。

そのため、

3Dレーザーで基準を作る。
デジタル距離計で位置を確認する。
純正ドットマットを所定位置へ設置する。

その物理的な条件を作ったうえで、初めてMDARSによるエーミングを実行します。

そして今回もMDARS上で、

「手順は正常に終了しました。」

まで確認しています。

⸻

🔍 「ズレているから全部調整」でもない

今回、もう一つ大切なのがここです。

作業前確認で別のカメラにもズレがあった。

だからといって、

「せっかくだから全部エーミングしておきました」

とはしません。

今回請け負った修理によって影響したのは、左ドアミラーに装着された左カメラ。

一方、フロント側のズレについては、

入庫時から存在していたことを確認し、お客様へ説明。

そのうえで今回は調整しないという判断になっています。

つまり、

作業前確認
+
因果関係の切り分け
+
お客様への説明
+
必要範囲のエーミング

までが一つの作業です。

⸻

💡 「何を交換したか」だけでは、必要なADAS作業は見えてこない

今回交換した部品だけを見れば、

左後ろドア。

でも、そこから修理工程を追っていくと、

左後ろドア交換
→ 左ドアミラー脱着
→ 左サイドカメラ
→ 360°ビュー・モニタ
→ 左カメラ個別エーミング

までつながります。

これからの自動車整備では、

交換部品から作業を考えるだけではなく、その作業によって影響を受ける電子制御システムまで追いかける。

この視点がますます重要になってくると思います。

⸻

📌 エーミングは「調整」だけでなく「因果関係を証明する作業」へ

今回のような全方位カメラでは、

「正常終了しました」

という診断機画面だけを残すのではなく、

作業前はどうだったのか。
今回どこを触ったのか。
どのカメラがその作業の影響を受けたのか。
どこをエーミングしたのか。
作業後どうなったのか。

そこまで残しておくことが重要だと考えています。

物理的な修理を元に戻す。
電子制御システムを元に戻す。
そして、その作業との因果関係を記録として残す。

今回のCX-5は、まさにその重要性が分かりやすい事例でした。

#エーミング #キャリブレーション #360度ビューモニター #360ビュー #サイドカメラ #ドア交換 #ドアミラー #電子制御装置整備 #特定整備

【ADAS作業レポート】MAZDA CX-8「ドアミラーを外しただけ」でも、360°ビューは確認が必要です。今回の車両は、MAZDA CX-8実施作業は、ドア交換に伴う左ドアミラーの脱着。それに伴い、360°ビュー・モニタ・システム エーミ...
17/09/2026

【ADAS作業レポート】MAZDA CX-8

「ドアミラーを外しただけ」でも、360°ビューは確認が必要です。

今回の車両は、

MAZDA CX-8

実施作業は、
ドア交換に伴う左ドアミラーの脱着。

それに伴い、

360°ビュー・モニタ・システム エーミング(左側)

を実施しました。

使用した診断機は、MAZDA純正 IDS。

エーミング機材は、

MAZDA純正ドットマット
3Dレーザー
デジタル距離計

安定化電源には、Schumacher(シューマッハ)を使用しています。

⸻

📷 なぜ「ドアミラーの脱着」でエーミング?

360°ビュー・モニタ・システムでは、車両周囲に配置された複数のカメラ映像を利用して、車両周辺を確認できる映像を作り出しています。

そして今回脱着した左ドアミラーには、左側を撮影するカメラが装着されています。

ここで重要なのが、

「元の位置に取り付けたから大丈夫」

とは限らないこと。

カメラそのものを交換していなくても、ドアミラーを脱着すれば、カメラの位置や向きに影響する可能性があります。

だからこそ、整備要領書に基づいて必要なエーミングを実施します。

⸻

🎯 MAZDA純正「ドットマット」を使用

今回の作業で特徴的なのが、

MAZDA純正ドットマット

です。

ADASのエーミングというと、前方カメラ用の大きなターゲットや、ミリ波レーダ用のリフレクタをイメージすることが多いと思います。

しかし、360°ビュー・モニタ・システムでは目的が違います。

今回は、車両左側の所定位置へ純正ドットマットを設置し、カメラがそのパターンを認識できる環境を作ります。

重要なのは、

「マットを置けばいい」わけではない

ということ。

⸻

📐 カメラではなく「基準」を合わせる

ドットマットの位置を決めるために使用するのが、

3Dレーザーとデジタル距離計。

車両を基準として、

どこに、どの向きで、どの距離にターゲットを設置するのか。

この幾何学的な条件を作ってから、IDSでエーミングを実行します。

これは前方カメラやミリ波レーダのエーミングでも同じですが、

診断機を操作する前の「測定」と「設置」が非常に重要。

診断機は、間違って置いたターゲットを正しい位置へ動かしてくれるわけではありません。

⸻

💻 今回はMAZDA純正IDS

今回使用したのは、

MAZDA純正診断機 IDS。

IDSから、

360°ビュー・モニタ・システムの左側エーミング

を実施します。

ここも最近のMAZDA車を扱ううえでは面白いところです。

MAZDAの純正診断環境には、車両世代によってIDS、MDARS、さらに新世代のMDARS IIがあります。

同じ「MAZDA車」でも、すべて同じ診断環境・同じ作業方法ではありません。

車両に合わせて、必要な診断環境を選択する。

これも現在の電子制御装置整備では重要になっています。

⸻

🔍 「交換」だけがエーミングの入口ではありません

今回、一番伝えたいのはここです。

実施した作業は、

左ドアミラーの「交換」ではなく「脱着」。

カメラ交換でもありません。

それでも、その作業がカメラの取付状態に影響する可能性があり、整備要領書上エーミングが必要になるのであれば、必要な作業を実施する。

つまり、

「何を交換したか?」だけを見ていては、必要な電子制御装置整備を拾えない

ということです。

見るべきなのは、

「その作業によって、どのセンサー・カメラ・システムに影響するのか?」

です。

⸻

🚘 360°の映像は「4枚の写真」ではない

360°ビュー・モニタの画面を見ると、自然につながった一つの映像に見えます。

でも、その裏側では複数のカメラ映像を利用しています。

だからこそ、1つのカメラの位置関係が変われば、システムが想定する幾何学的な関係にも影響する可能性があります。

左ドアミラーを脱着した。

物理的には元通りに見える。

でも、

電子制御システム側も元の状態に戻っているのか?

そこまで確認して、今回の作業は完了です。

⸻

🔧 「脱着して元に戻した」で終わらせない

現在の自動車整備では、

部品を外す
↓
部品を取り付ける
↓
作業終了

では済まないケースが増えています。

今回なら、

左ドアミラー脱着
↓
左サイドカメラへの影響を確認
↓
純正ドットマットを規定位置へ設置
↓
IDSで360°ビュー・モニタ・システムのエーミング
↓
システム側まで復元

という流れになります。

私たちがいつも意識している、

「何を交換したか」ではなく、
「その作業が何に影響したか」

という考え方です。

部品を元に戻す。

そして、

電子制御システムも元に戻す。

そこまで含めて、現在の自動車整備だと考えています。

#エーミング #キャリブレーション #360度ビューモニター #サイドカメラ #ドアミラー #シューマッハ #電子制御装置整備 #特定整備

【ADAS作業レポート】0.1°が消えない。原因はレーダそのものなのか?今回の車両は、トヨタ ハイエース TRH200V令和4年5月登録実施作業は、フロントバンパー交換それに伴い、ミリメータウェーブレーダセンサASSY調整を実施しました。診...
17/09/2026

【ADAS作業レポート】0.1°が消えない。原因はレーダそのものなのか?

今回の車両は、

トヨタ ハイエース TRH200V
令和4年5月登録

実施作業は、

フロントバンパー交換

それに伴い、

ミリメータウェーブレーダセンサASSY調整

を実施しました。

診断機はトヨタ純正GTS+。

安定化電源はSchumacher。

エーミング環境は、いつものフルセット。

3Dレーザー、デジタル距離計、三角リフレクタ、専用ターゲットスタンド等を使用して、車両中心線・距離・高さ・ターゲット位置を確認して作業しています。

写真の通り、今回もターゲット距離は、

3.000m

に設定しています。

そして今回のPOINTは、ここからです。

🎯 1回目のエーミング後、0.1°が残った

GTS+で前方レーダー光軸ずれ量を確認すると、

水平方向:左 0.0°
垂直方向:下 0.1°

となりました。

もちろん0.1°という数値だけを見て、直ちに異常と判断する話ではありません。

しかし今回は、

「なぜ0.1°残ったのか?」

を考えてみました。

理由があります。

このハイエース、

純正フェイスではありません。

社外フェイスへ変更されています。

つまり、ミリ波レーダセンサそのものの取付状態だけではなく、

レーダの前に存在する物体の形状・材質・厚み・構造が、メーカー純正状態とは異なっています。

ここが今回の検証ポイントです。

⸻

📡 ミリ波レーダは「前に何があるか」の影響を受ける

ミリ波レーダは、

Tx(送信アンテナ)から電波を送信し、対象物から戻ってきた電波をRx(受信アンテナ)で受信

して対象物を検出します。

ところが、レーダの前には何もないわけではありません。

車種によって、

エンブレム
グリル
バンパー
レーダカバー

などを電波が通過します。

これらは、ミリ波から見れば単なる「透明な板」とは限りません。

76~81GHz帯の自動車用レーダについては、バンパー材料を通過することで信号が減衰し、材料や塗装の違いによってその特性が変化することが実測されています。

さらにレーダ前面の部材は、

透過
減衰
反射
位相変化

などを生じさせる可能性があります。

つまり、

見た目が同じようなフェイスでも、レーダから見た電磁気的な環境まで同じとは限らない。

ということです。

⸻

🔍 Toyotaの整備情報にもヒントがあります

Toyotaのミリ波レーダ調整手順でも、光軸調整前に、

レーダ前面のエンブレムの汚れ、フロント周辺の損傷・変形、グリルやバンパーの取付状態、レーダセンサの取付状態

などを確認するよう求めています。

また別のToyota系整備情報では、調整エリアに反射物が存在することを「Plural targets abnormality」の原因として挙げています。

これも、ミリ波レーダのエーミングが単純な、

「レーダ → 三角ターゲット」

だけの世界ではないことを示しています。

⸻

🧪 そこで、もう一度エーミングしてみる

今回、1回目の調整後に、

垂直方向 下0.1°

が残りました。

そこで設置条件を確認したうえで、再度エーミング。

さらに繰り返し、

合計3回のエーミング

を実施しました。

最終的なGTS+の表示は、

水平方向:0.0°
垂直方向:0.0°

となりました。

写真にも、その結果が残っています。

ここからが今回の考察です。

⸻

🧠 「3回やれば学習する」のか?

ここは慎重に考える必要があります。

今回、

0.1° → 再エーミング → 最終的に0.0°

となったことは事実です。

しかし、

「社外フェイスの反射係数をレーダECUが3回のエーミングによって学習した」

とまでは、今回の検証だけでは証明できません。

エーミングを繰り返したことで、

測定ばらつきの中で0.0°に収束した

可能性もあります。

ターゲットからの受信信号や周囲の反射環境が微妙に変化した可能性もあります。

そして、

レーダ内部の光軸補正処理が再実行された結果

という可能性も考えられます。

現時点では、どれか一つに断定するだけのデータはありません。

だからこそ面白い。

⸻

📡 ただし「社外フェイスが影響する」という仮説には根拠がある

自動車用レーダの研究では、レーダ前面のバンパーやレドームについて、

材料
厚み
塗装
誘電率
形状

などによって、電波の透過・反射特性が変化することが知られています。

今回のハイエースでは、

レーダ本体は同じ。
ターゲット位置も同じ。
作業環境も同じ。

しかし、

レーダ前面のフェイスが純正ではない。

ここは無視できない条件だと考えています。

私たちが今回立てている仮説は、

社外フェイスによってレーダ前面の電磁波環境が純正状態から変化し、Txから放射された信号とRxで受信する信号の関係にも何らかの影響を与え、それが光軸ずれ量の測定・補正結果に現れた可能性がある

というものです。

現時点では、あくまで仮説です。

⸻

⚠️ だから「0.1°なら何回かやれば0.0°になる」という話ではありません

ここは非常に重要です。

エーミング後に0.1°が残った場合、

とりあえず何回もエーミングすればいい

という意味ではありません。

まず確認すべきなのは、

車両中心線
ターゲット距離・高さ
床面条件
レーダ本体の取付状態
ブラケットの変形
バンパー・グリルの取付状態
レーダ前方の遮蔽物
周辺の反射物

です。

Toyotaの整備情報でも、調整結果が規定どおりでなければ、レーダやバンパー等の状態を確認したうえで再調整する考え方が示されています。

これらを確認せず、

「0.0°になるまで繰り返す」

では、エーミングではなく数字合わせになってしまいます。

⸻

🔬 今回は「結果」より「なぜ?」が重要

1回目、

0.0°/0.1°

3回の調整後、

0.0°/0.0°

結果だけなら、

「エーミング完了」

で終わる話です。

でもSBDでは、

なぜ最初に0.1°が残ったのか?

の方が気になります。

純正フェイスと社外フェイスで、

透過損失は違うのか?
反射量は違うのか?
位相への影響はあるのか?
受信強度は変化するのか?
エーミングの再現性に差が出るのか?

ここまで確認できれば、今回の「仮説」を「検証結果」に変えられます。

⸻

💡 エーミングは「0.0°を出す作業」ではない

診断機に、

0.0°

と表示されたら終わり。

それだけなら、作業としては簡単です。

でも本当に重要なのは、

その0.0°が、どのような条件で成立した0.0°なのか。

車両の前に置かれた三角ターゲットだけを見るのではなく、

レーダからターゲットまでの電波の通り道全体を見る。

ミリ波レーダのエーミングでは、そんな視点も必要だと考えています。

今回もまた一つ、

「なぜ?」

が増えました。

こういう疑問を、実車・実機・測定データを使って一つずつ確認していく。

それがSBDの検証です。

#ハイエース #エーミング #キャリブレーション #ミリ波レーダ #電子制御装置整備 #特定整備 #自動車整備 #故障診断

15/09/2026

【SFDを一次資料から読み解く】「セキュリティ解除」だけではない、これからの車両診断

最近のVolkswagen・AUDIを診断していると、避けて通れなくなってきたのが、

SFD
Vehicle Diagnostics Protection

です。

SFDについては、

「セキュリティロックが掛かっている」
「診断機で解除が必要」
「汎用診断機では作業できない場合がある」

など、いろいろな説明を耳にします。

では、そもそもVolkswagen Group自身は、SFDをどのような仕組みとして説明しているのでしょうか?

今回、Volkswagen Groupが公開している一次資料を読んでみました。

資料のタイトルは、

“Vehicle Diagnostics Protection (SFD)”

そして、その下には、

“Privacy Policy for Users of Diagnostic Tools from Third-party Suppliers”

と書かれています。

つまり、

「第三者サプライヤー製診断機のユーザーを対象としたSFDのプライバシーポリシー」

です。

ここが、今回この資料に注目した大きな理由です。

これは、Volkswagen・AUDIの純正診断機だけについて書かれた資料ではありません。

“Diagnostic Tools from Third-party Suppliers”

と明記されています。

⸻

🔐 そもそもSFDは何のためにあるのか?

資料にはSFDについて、こう書かれています。

“Vehicle Diagnostics Protection (SFD) is a system that is intended to help protect software-controlled vehicle functions against misuse and unauthorised changes.”

要するに、

ソフトウェアで制御されている車両機能を、不正使用や許可されていない変更から保護するためのシステム

という位置付けです。

ここまでは「セキュリティ」という言葉から想像できる内容です。

でも、この先を読むとSFDの仕組みがもっと具体的に見えてきます。

⸻

🔑 キーワードは「Activation Token」

資料には、SFDを使用するときの流れが説明されています。

“The vehicle diagnostic tester requests an activation token from the SFD IT backend.”

診断機が、

SFD IT backend

に対して、

Activation Token(アクティベーショントークン)

を要求します。

さらに、

“The SFD IT backend generates and signs the activation token and sends it to the vehicle diagnostic tester.”

SFD IT backendがトークンを生成・署名し、診断機へ返します。

そして診断機から、そのトークンを車両のコントロールユニットへ送信。

ECU側でトークンを確認し、認証が成立すると対象機能へのアクセスが可能になる、という流れです。

イメージすると、

診断機
↓
SFD IT backendへ認証要求
↓
Activation Token発行
↓
診断機
↓
車両ECUへToken送信
↓
ECUがTokenを確認
↓
対象機能へのアクセス

となります。

つまりSFDは、

「診断機の中に入っているロック解除機能」

という単純なものではありません。

車両・診断機・メーカー側バックエンドを含めた認証システム

として見る必要があります。

⸻

👀 そして、ここからが整備事業者として非常に興味深いところ。

資料には、

“the SFD IT backend manages all access operations centrally and logs them to provide a subsequent evidence trail.”

と書かれています。

つまり、

SFD IT backendでアクセス操作を中央管理し、後から証跡を確認できるようログを残している。

ということです。

では、何が記録されるのでしょうか?

資料を読むと、

VIN
Vehicle brand
Diagnostic address
Control unit ID
User ID
IP address
Service request time stamp

などが記載されています。

さらにサービスリクエストデータとして、

Pseudonymised user ID
Pseudonymised workshop ID
Country
IP address

がSFD IT backendへ送信・保存されると説明されています。なお、実名や連絡先についてはSFD IT backendへ送信されず、診断機メーカー側に保持されるとされています。

⸻

🔎 「誰がECUに変更したのか」を追える仕組み

そして資料には、非常に重要な一文があります。

“This makes it possible to determine who made the changes to the control unit in the event of misuse.”

つまり、不正使用が発生した場合に、

誰がコントロールユニットに変更を行ったのかを確認できるようにする。

という考え方です。

ここまで読むと、SFDを単なる、

「診断機のセキュリティ解除」

として説明するだけでは足りないことが分かります。

少なくとも今回のVolkswagen Groupの資料から見えるのは、

誰が
どの車両の
どのコントロールユニットへ
いつアクセスしたのか

という情報まで含めて管理し、後から追跡可能な証跡を残す仕組みです。

⸻

⏱️ そして驚いたのが「30年」

さらに資料には、

“The service request data will be erased 30 years after the relevant service request”

とあります。

具体的な不正使用・不正使用の疑いに関する調査によって保存が必要となる場合を除き、サービスリクエストデータは、

該当するサービスリクエストから30年後に消去

するとされています。

30年。

この数字を見るだけでも、メーカーが診断アクセスの履歴を、その場限りの「ロック解除」として扱っていないことが分かります。

⸻

🚘 Volkswagen・AUDIだけの話でもありません

この資料ではSFDに関係するControllerとして、

Volkswagen AG
AUDI AG
ŠKODA AUTO
SEAT
Bentley Motors
Lamborghini
Bugatti
Porsche
MAN Truck & Bus

が記載されています。

もちろん、資料には「該当する車両がSFD機能をサポートしている場合」という前提があります。

そのためSFDを、

「Volkswagenだけの特殊なセキュリティ」

と見るより、

Volkswagen Groupにおける車両診断保護の仕組み

として理解した方がよさそうです。

⸻

🔧 ここからはABNLとして考えていること。

私たち整備事業者が診断機を選ぶとき、これまでは、

「この車種に対応しているか?」
「DTCを読めるか?」
「サービスリセットができるか?」
「エーミングメニューがあるか?」

といった、

診断機そのものの機能

を見ることが中心でした。

しかしSFDの仕組みを見ると、それだけでは判断できない時代になってきていることが分かります。

診断機がその車両と通信できることと、

保護された機能に正規の認証経路を通じてアクセスできること。

これは同じ意味ではありません。

⸻

⚠️ 「メニューがある」と「作業できる」は同じではない

ここは、ABNLでさまざまな純正診断機・汎用診断機を実車検証していて、非常に重要だと感じている部分です。

診断機の画面に、

「この機能があります」

と表示される。

だから、

「この診断機ならこの作業ができる」

とは限りません。

SFDのようなセキュリティが介在する車両では、

車両対応
+
診断ソフト
+
VCI
+
通信環境
+
ユーザー認証
+
ライセンス
+
メーカー側バックエンドへのアクセス

まで含めて、

「診断環境」

として考える必要が出てきます。

診断機単体の性能比較だけでは説明できない領域です。

⸻

💡 「診断機」から「診断環境」へ

今回のVolkswagen Groupの資料を読んで、改めて感じたのはここです。

これからの整備現場では、

「どの診断機を持っていますか?」

だけでは足りない。

重要なのは、

「その作業を成立させる診断環境を持っていますか?」

ということではないでしょうか。

電子制御化。

車両ネットワーク。

オンライン通信。

サイバーセキュリティ。

ユーザー認証。

バックエンド認証。

これらが整備作業の中に入ってくれば、整備事業者側にも新しい知識と環境が必要になります。

⸻

📌 診断機が作業方法を決めるのではない

そして、これはSFDに限った話ではありません。

私たちが最近の実車検証で繰り返し確認しているのが、

「診断機にメニューが表示されること」と
「メーカーが要求する作業を正しく実行できること」は別

ということです。

まず整備要領書を確認する。

必要な作業を特定する。

その作業に必要な診断・認証環境を確認する。

そして、その環境を使って作業する。

診断機が作業方法を決めるのではなく、必要な作業に合わせて診断環境を選ぶ。

これからは、この考え方がますます重要になってくると思います。

ABNLでは引き続き、

純正診断機と汎用診断機。
認証ありと認証なし。
そして実際の車両では何が違うのか。

実車・実機を使って検証していきます。

⸻

📄 今回参照したVolkswagen Group公式資料

Vehicle Diagnostics Protection (SFD)
Privacy Policy for Users of Diagnostic Tools from Third-party Suppliers
Version V1.3 / 01.09.2025

※本投稿は上記Volkswagen Group公式資料の内容を、整備事業者の視点から読み解いたものです。資料自体はSFDのプライバシーポリシーであり、SFDの全技術仕様を説明する技術マニュアルではありません。

#診断機 #スキャンツール #故障診断 #サイバーセキュリティ #電子制御装置整備 #自動車整備

【検証レポート】「エーミングできました」は、本当に正しくできたのでしょうか?以前、SBDのFacebookでも取り上げた、「汎用診断機によって、同じエーミング作業でも挙動が違う」というテーマ。当時は実車検証の内容をブログとしてご紹介しました...
12/09/2026

【検証レポート】「エーミングできました」は、本当に正しくできたのでしょうか?

以前、SBDのFacebookでも取り上げた、

「汎用診断機によって、同じエーミング作業でも挙動が違う」

というテーマ。

当時は実車検証の内容をブログとしてご紹介しましたが、今回はその検証結果を改めて整理し、正式な検証報告書としてまとめました。

今回の検証車両は、

トヨタ アクア
型式:MXPK11
年式:2026年5月

です。

そして今回、あえて「正しくエーミングできるか」だけを調べたわけではありません。

むしろ確認したかったのは、

間違った条件で作業したとき、診断機はそれを間違いとして検知できるのか?

という部分です。

⸻

🔍 あえてターゲットを「間違った位置」に置く

前方ミリ波レーダーの調整について、整備要領書で規定されたターゲット距離は、

1500mm。

そこで今回は、

①規定値:1500mm
②規定外:3000mm

の2条件を設定。

ターゲット位置を意図的に規定値から大きく外し、各診断機で、

「光軸ずれ量確認」
「光軸調整」

をそれぞれ実行しました。 トヨタ アクア 前方レーダー検証報告書.pdf

つまりこれは、

診断機にわざと間違った条件を与える試験

でもあります。

なぜこんな検証をするのか。

実際の修理現場では、診断機の画面に

「光軸調整が完了しました」

と表示されれば、作業者は「エーミングできた」と判断してしまう可能性があるからです。

でも本当に重要なのは、

その「完了」が、メーカーの定めた条件で正しく成立した完了なのか?

ということです。

⸻

📊 結果は、かなり興味深いものになりました

今回比較したのは、

NANO-BT
HDM9000
AUTEL 909
Gscan3
BOSCH KTS560

です。

まず、NANO-BTとHDM9000。

規定距離1500mmでは、

光軸ずれ量確認:○
光軸調整:○

そしてターゲットを規定外の3000mmにすると、

光軸ずれ量確認:×
光軸調整:×

となりました。

つまり今回の試験条件では、

正しい条件では作業が成立し、誤った条件ではエラーとして止まった。

報告書でも、この2機種について「規定値で校正・光軸ずれ量確認とも正常完了し、規定外では適切にエラーを検知」と評価しています。 トヨタ アクア 前方レーダー検証報告書.pdf

ここは非常に重要だと思っています。

⸻

⚠️ 一方、AUTEL 909では違う挙動

AUTEL 909は、規定距離1500mmで、

光軸調整:○

でした。

ところが、

光軸ずれ量確認:×

という結果になりました。

さらに興味深いのは3000mm。

報告書の一覧では、

光軸ずれ量確認:○
光軸調整:×

という結果です。 トヨタ アクア 前方レーダー検証報告書.pdf

つまり、

同じ車両、同じレーダー、同じターゲットでも、診断機によって処理の成立条件や判定の仕方が同一ではない可能性がある。

今回の検証結果から、そこが見えてきます。

⸻

⚠️ Gscan3はさらに違う

Gscan3では、規定距離1500mmでも、

光軸ずれ量確認:×
光軸調整:×

という結果。

一方、規定外の3000mmでは、

光軸ずれ量確認:○
光軸調整:○

となりました。 トヨタ アクア 前方レーダー検証報告書.pdf

これは今回の検証の中でも、特に考えさせられる結果です。

なぜなら、

メーカー指定条件から外したことで、逆に機能が成立した

からです。

ただし、ここで誤解してはいけないのは、

「3000mmで作業すればよい」

という意味では全くありません。

メーカーの整備要領書で指定されている条件は1500mmです。

したがって今回の結果は、

診断機側の作業ロジック、データ、実装方法などに何らかの違いが存在する可能性を示す現象

として捉えるべきだと考えています。

原因そのものについては、今回の検証だけでは断定できません。

⸻

🖥️ BOSCH KTS560は「できない」が明確だった

BOSCH KTS560では、今回の車両について、

前方レーダーはサポートなし。

確認できたのはFカメラ、BSMでした。 トヨタ アクア 前方レーダー検証報告書.pdf

これも一つの重要な結果です。

「対応していない」ということが明確なら、作業者は別の診断環境を選択できます。

私たちが怖いと考えているのは、

メニューがある。
実行できる。
そして「完了」と表示される。

でも、

その処理がメーカー指定条件と同じロジックで成立しているか分からない。

というケースです。

⸻

🚨 「メニュー表示=作業可能」ではない

ここが今回の検証で最も伝えたい部分です。

汎用診断機を評価するとき、

「この車種に対応しています」

という表現だけでは、実際の整備現場では十分ではありません。

さらに、

「エーミングのメニューが表示された」

だけでも足りません。

そして今回の結果を見ると、

「完了した」だけでも判断できない

というところまで考える必要があります。

必要なのは、

メーカー指定の条件で、メーカーが意図した処理が正しく成立しているか。

ここだと思います。

⸻

🔧 だからSBDでは「意地悪な検証」をします

普通なら1500mmにターゲットを置いて、エーミングが成功すれば検証終了です。

でも、それだけでは診断機の特性は分かりません。

だから今回は、

あえて3000mmに置きました。

正しくできることだけではなく、

間違った条件では、ちゃんと失敗してくれるのか。

これも診断機を評価するうえで重要な性能だと考えているからです。

自動車の電子制御装置整備では、

「できること」だけでなく、「間違った作業を成立させないこと」

も重要ではないでしょうか。

⸻

📌 今回の検証から見えたこと

今回の結果だけで、特定の診断機メーカーや機種の性能そのものを順位付けするつもりはありません。

診断機は、

ソフトウェアバージョン
車両データ
契約状態
VCI
通信環境
車両仕様

などによって結果が変わる可能性があります。

今回の評価はあくまで、

2026年5月登録・MXPK11アクアという実車と、今回使用した診断環境・試験条件における検証結果

です。

しかし、少なくとも今回の実証から、

同じ車両の同じエーミングメニューでも、診断機によって挙動が同じとは限らない。

これは実車で確認できました。

報告書では、規定条件で校正と光軸ずれ量確認が成立し、規定外条件をエラーとして検知したNANO-BTとHDM9000を「適正」、1500mmで一部または双方が成立しなかったAUTEL909とGscan3を「不適正」と評価しています。 トヨタ アクア 前方レーダー検証報告書.pdf

⸻

「完了しました」の、その先を見る。

これからの電子制御装置整備では、

診断機を持っているか?

だけではなく、

その診断機が、その車両、その作業、その条件で、どのように動くのか?

を知ることが重要になってくると思います。

そして何より、

診断機の画面を信用する前に、整備要領書を確認する。

診断機が作業方法を決めるのではありません。

メーカーの整備要領書に基づいて作業方法を決め、その作業を実行するために診断機を使う。

この順番を逆にしない。

今回の検証報告書は、その重要性を改めて確認できる結果になりました。

「エーミング完了」と表示された。
だから正しい。

本当にそうでしょうか?

SBDではこれからも、実車・実機を使って、一つずつ検証していきます。

#エーミング #キャリブレーション #トヨタ #アクア #ミリ波レーダー #汎用診断機 #スキャンツール #電子制御装置整備 #特定整備

ADAS作業レポート|トヨタ エスクァイア ZWR80G整備要領書は1548mm。現車実測は1519mm。では、どちらを使う?今回の車両は、トヨタ エスクァイア ZWR80G自社にてフロントガラス交換を実施し、その後、プリクラッシュセーフテ...
12/09/2026

ADAS作業レポート|トヨタ エスクァイア ZWR80G

整備要領書は1548mm。現車実測は1519mm。では、どちらを使う?

今回の車両は、

トヨタ エスクァイア ZWR80G

自社にてフロントガラス交換を実施し、その後、

プリクラッシュセーフティ 前方センサ調整

を行いました。

使用した診断機は、トヨタ純正GTS+。

機材は、

イヤサカ製ターゲットスタンドセット
イヤサカ製ABオリジナルバージョン(検証用モデル)
ツールプラネット製カメラターゲット
3Dレーザー
スタッフ

安定化電源には、BOSCH BAT6120を使用しています。

今回のPOINTは、単に「カメラエーミングを実施した」という話ではありません。

整備要領書に記載された数値と、実際の車両を測定した数値に差があった場合、どう考えるのか。

ここです。

⸻

📏 整備要領書には「1548mm」

今回の車両について整備要領書を確認すると、レコグニションカメラ/ターゲット位置記憶の作業では、

カメラ高さ:1548mm

と記載されています。

では、その1548mmをそのままGTS+へ入力すればよいのか。

SBDでは、その前に現車を実測します。

3Dレーザーとスタッフを使用して、実際の車両でカメラ高さを測定したところ、

実測値は1519mm。

整備要領書記載値との差は、

29mm

ありました。

そこで今回の作業では、整備要領書記載値の1548mmではなく、

現車を実測した1519mmを、作業スタッフがGTS+へ入力して作業を実施しています。

写真の診断機画面に表示されている

「レコグニションカメラ高さ 1519mm」

は、車両やGTS+が記憶していた数値ではありません。

SBDで現車を測定し、その実測結果を入力した値です。

ここは大切なポイントです。

⸻

🎯 さらに整備要領書を見ると「±6mm」

もう一つ注目したいのが、ターゲット側の設置条件です。

整備要領書には、

ターゲット中心の高さについて、許容範囲は±6mm

と記載されています。

つまり、ターゲット高さについては、数mm単位で設置精度を求めています。

一方で今回、

整備要領書記載のカメラ高さ
1548mm

現車実測値
1519mm

その差
29mm

が確認されました。

この状況で、

「整備要領書に1548mmと書いてあるから1548mmを入力する」

でよいのか。

ここを考える必要があります。

⸻

🔍 マニュアル値は大切。でも、現車確認も大切。

もちろん、整備要領書を無視しているわけではありません。

むしろ逆です。

SBDでは、

整備要領書を確認する
↓
作業条件を理解する
↓
現車を実測する
↓
整備要領書記載値と現車の状態を比較する
↓
その車両の実測値を使用して作業する

という流れを重視しています。

今回でいえば、

1548mmという整備要領書の数値を確認したうえで、現車を測定した結果1519mmだった。

だから、

1519mmをGTS+へ入力した。

ということです。

⸻

📐 29mmをどう考えるか?

ターゲット側の高さについて、整備要領書では±6mmという許容範囲が示されています。

そのような精度を求める作業の中で、カメラ高さに29mmの差がある。

これを、

「3cm弱だから大丈夫」

と見るのか。

それとも、

「なぜ整備要領書記載値と現車実測値が違うのか?」

と確認するのか。

SBDでは後者です。

車両姿勢、タイヤ、車高、積載状態、個体差など、実車にはさまざまな条件があります。

だからこそ、

整備要領書の数値を確認することと、現車を測定することは両方必要

だと考えています。

⸻

📍 ターゲット側も3Dレーザーで実測

写真では、車両側のカメラ高さだけではなく、ターゲット側についても3Dレーザーとスタッフを使って高さを確認しています。

ターゲットは、

「この辺に置けば見える」

ではなく、

車両中心
距離
高さ
左右位置

を確認しながら設置。

特に今回のように、整備要領書でターゲット高さに許容範囲が示されている作業では、ターゲット設置そのものが作業精度を左右します。

⸻

💻 診断機は「最後に実行する道具」

エーミングというと、診断機の画面を開いて「開始」を押す作業に見えるかもしれません。

しかし、実際にはその前の工程の方が重要です。

現車を測る。
車両中心を確認する。
ターゲットとの距離を測る。
高さを合わせる。
ターゲット位置を確認する。

その条件を作ったうえで、初めてGTS+で光軸学習を実行します。

今回も最終的に、

「光軸学習が完了しました。」

まで正常に終了しました。

⸻

SBDが大切にしているのは「数値の意味」

今回の作業で伝えたいのは、

「1548mmではなく1519mmを使うべき」

という単純な話ではありません。

重要なのは、

その数値がどこから来たものなのかを理解すること。

整備要領書に書かれている数値なのか。

現車を測定した数値なのか。

作業者が診断機へ入力する数値なのか。

ターゲットを設置するための数値なのか。

同じ「mm」という数字でも、意味はそれぞれ違います。

だからこそ、

マニュアルを読む。
現車を測る。
数字の意味を理解する。
そのうえで作業する。

これがSBDのエーミングに対する考え方です。

フロントガラス交換は、ガラスを取り替えて終わりではありません。

ガラスを正しく交換し、
カメラが見る基準も正しく作り直す。

そこまでが、現在のフロントガラス交換に伴う電子制御装置整備だと考えています。

#エスクァイア #エーミング #キャリブレーション #プリクラッシュセーフティ #前方カメラ #フロントガラス交換 #電子制御装置整備 #特定整備

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